TOP現役診療看護師(NP)の声
診療看護師(NP)たちが各自の組織でどのようにして「診療看護師(NP)」として理解してもらっているか、「診療看護師(NP)」の役割がどのようになっているかなど、各地の診療看護師(NP)を現役の診療看護師(NP)がインタビューします。
愛知医科大学病院 NP部
診療看護師(NP)
田中 千晶(タナカ チアキ)
幼い頃から人と関わることが好きで、祖父が病院通いをしていたこともあり、病気やケガで困っている人を笑顔にできる看護師を目指すようになりました。その後、山形の大学病院に看護師として就職してからの数年間は、患者さんの力になりたいという思いは人一倍強いのに実力が伴わず、ずっともがいていましたが、看護師経験が5年目を迎えた頃からは、喘息の発作や心不全で入退院を繰り返す患者さんのケアに関わる中で、自分の中のモヤモヤの原因がクリアになっていきました。そのうち、「ICUに運ばれてきた患者さんの容態が安定し、笑顔にするだけでは十分な看護とは言えない。ご自宅でもずっと笑顔で生活を送れるよう、先を見ることができる看護師でありたい。深みのある看護をするためには医学の知識が必要だ」と考えるようになり、大学の講義で印象に残っていた診療看護師(NP)のことを思い出したところ、大学院に診療看護師(NP)育成コースが誕生するという偶然も重なり、志す決心をしました。看護師として夜勤で働きながら日中に大学院に通う2年間は体力的にはハードでしたが、とても充実した毎日でした。
2019年に診療看護師(NP)の資格を取得後、山形の大学病院で初めての診療看護師(NP)として、働き方を開拓していくような形で活動を始めました。その後、2020年2月の結婚を機に愛知県へ引っ越すことになり、現在の愛知医科大学病院のNP部へ転職しました。愛知医科大学病院では、麻酔科、心臓外科、疼痛緩和外来、救急診療部、リハビリテーション科の5つの診療科で診療看護師(NP)が活動していて、就職前の見学で麻酔科の診療看護師(NP)の方にお話しを聞く機会をいただきました。麻酔管理のことはもちろん、患者さんの病態や術式のことなど何を質問しても具体的な答えが返ってきてすごい!と感じました。また、患者さんにとって優しい麻酔とは、術後に吐き気も痛みもなく過ごせるようにするには、退院後の生活や患者さんが望む早い職場復帰を叶えるには、という先のことまで視点を広げていて、診療看護師(NP)が麻酔管理の補助に関わる意味を強く感じました。
医師とのディスカッションの場面で、患者さんの食事やリハビリ、退院後の生活にも配慮して、堂々と自らの考えや意見を述べている診療看護師(NP)の先輩方の姿が、私の中では衝撃的でした。それまでに私も診療看護師(NP)として、ICUで集中ケアを行う際の呼吸管理や、透析の管理などを医師とディスカッションすることはあったのですが、診療看護師(NP)の先輩方は急性期の中でも患者さんの生活の部分を大事にしていて、医師と同じ認識を持ちながら、看護師としての基盤を活かした異なる視点を加味して意見交換をしていました。患者さんのための看護、という目的が明確で、「私がやりたいと思っていた看護を、この病院の診療看護師(NP)たちは高いレベルで実践している。このレベルに私も到達したい」と思いました。
2021年12月に出産し、1年間の産休を経て2022年11月に職場復帰しました。出産前は日勤も夜勤もしていましたが、出産を機に家族との時間も大事にしたいと思うようになり、職場復帰後は、時短勤務制度を利用しながら通常より1時間短い勤務をさせてもらっています。また、復帰直後は管理者や周囲のスタッフが配慮してくれて、子育てとの両立がしやすいよう午前中のみの短い勤務時間から始められたことも、本当にありがたかったです。今はまだ夜勤はしていませんが、子どもが3歳になり落ち着いてくる頃なので、そろそろ夜勤にも入りたいと思っています。
むしろ、自分自身の診療看護師(NP)としての存在意義や役割を客観視する、いい機会になりました。医療の現場では、ずっと同じ診療看護師(NP)や看護師が患者さんのケアをできるわけではありませんし、誰かが気づかないところに気づく人がいて、できない部分を他の人がやってくれるという「チームで看・診る」ことが重要だと気づくことができました。自分がいなくてもいいではなく、自分ができることをやろうという考え方に変化したのです。以前は、ICUの患者さんが一般病棟に移ってからも、仕事終わりに患者さんの様子を覗きに行くなど、仕事が0から100まであったら最初から最後まで見届けたいという考え方でした。でも、子育てをしていると時間の兼ね合いの難しさや、キャパオーバーになってしまうがことがあります。このような経験から、他のスタッフよりも1時間短い勤務とさせていただいていますが、与えられた時間でフルパワーで診療看護師(NP)としての役割を果たそう!と切り替えられるようになりました。
そうですね。患者さんを看・診ているのは、自分一人じゃない。私を助けてくれる心強い仲間と医師が患者さんのことを看・診てくれていると思えるし、この病院の診療看護師(NP)と医療スタッフなら大丈夫だと信頼できます。
すごくあると思います。私は診療看護師(NP)の役割に含まれる倫理的調整について、子育てをきっかけに以前よりも深く考えるようになりました。具体的には、ICUの診療看護師(NP)として患者さんのご家族への関わりをもっと広げられないかと考えたり、疼痛緩和外来の診療看護師(NP)として10歳未満の子どもたちを看・診る際に、この大事な時期に痛みを抱えなければならない子どもたちに対して、薬剤に頼りすぎない優しい医療と看護で痛みを緩和させ、元の生活を再獲得することができたらと考えるようになりました。さらに、子どもたちを案ずる母親のケアも重要視するようになり、母と子の相互関係を意識しながら治療、看護していくことを以前よりも強く意識するようになりました。
当院では、やりたいのにできないというジレンマはありません。判断に迷うことがあれば、NP部として全員でディスカッションしながら考えて、何をやるべきなのか、診療看護師(NP)としては立ち入りすぎずに医師にやってもらうべきなのか、もっとこういう部分まで介入していこうなどの話し合いの場があり、診療看護師(NP)の葛藤をため込まない仕組みが確立されていて、医師にも相談しやすい環境です。
診療看護師(NP)として専門性を高めるために知識を増やしたいと思っても、学びの時間を確保するのが本当に難しいですね。まだ子どもが小さいので学会やセミナーのために外出することが厳しく、振り返ってみるとコロナ禍のオンラインでの学会やセミナーのオンデマンド配信は子育て中の私としては助かっていました。最近は再び現地開催が増えてきたので、現地開催とオンデマンド配信のハイブリットで参加できたらいいのにと感じています。現在、ママ看護師をしている人の中には、診療看護師(NP)を目指したいけれど、子育て・仕事・勉強のトリプル生活を続けながらチャレンジすることにハードルを感じている方も少なからずいらっしゃる気がします。
夫からは「やりたいことは我慢せずにやってほしい。頑張っている母の姿は子供にも良い影響を与えるし、自分(夫)にも良い刺激になる」と言われております。
「家事は出来る人が出来る時にやる」「やってくれる事は当然ではない。必ずありがとうをお互いが言う」が自然とルールになっています。
現地開催学会へも家族3人で参加することが増え、私が学会に参加している最中は子供と夫が観光に出かけ、3人共に有意義な時間を過ごせています。
休日出勤の日は子供に勤務であることを説明すると、子供の『ママ、かっこいい!頑張って!』という言葉が、働く活力になっています。
診療看護師(NP)の仲間が増えるのは素直に嬉しいですし、目指してくれる人がもっと増えたらいいなと思います。ですが、どのタイミングで診療看護師(NP)を目指すかは、人によってキャリアや生活環境が異なるので、人それぞれで良いと思います。私が言えることは、人生の経験を豊かにすることは、診療看護師(NP)としての活動を広げることにもつながるということです。私自身も子育ての経験が、疼痛緩和外科痛みセンターに通う子どもや母親との関わりの中で活かせていると思いますし、できることが増えたという実感もあります。今では、一つずつ積み重ねた自分の人生が看護を充実させることにも繋がり、診療看護師(NP)としても大きく成長できるきっかけになると思えるようになりました。
私よりも長く、何人もの子育てをしながら診療看護師(NP)や看護師をしている先輩たちはたくさんいらっしゃいます。ママ歴3年の私が言うのはおこがましい面もあるのですが、子育てしながら働く苦労や大変さは、性別は関係なくその人にしか分からないと思うんですね。でも、今が大変でも1週間後に笑えたり、一年後にあんな苦労もあったなと懐かしく振り返ったりして、自分自身が笑顔になれる日が必ず来ます。その一瞬一瞬は大変なことも、すべてが患者さんの笑顔のためであり、子どもの笑顔、家族の笑顔、そして自分に返ってくる笑顔です。目の前の大変さを乗り越えた先にある、その笑顔を大切にして取り組んでいけば、楽しいと感じられ、大きな力になるのかなと思います。私もまだまだ頑張りますので、みなさんも一緒に頑張りましょう!
貴重なお話しをありがとうございました。女性や男性に関わらず、子育てをしながら人生経験を積み重ねることで、診療看護師(NP)としての視点や役割が広がり、活動できる領域も良い意味で変化していくことが分かりました。ママ診療看護師(NP)の先駆者として、今後のご活躍を楽しみにしています!
聞き手 : 日本NP学会 理事 伊藤健大
特定医療法人 社団春日会 黒木記念病院
看護部 教育師長
診療看護師(NP)
所属:取材時のものです
原 光明(ハラ ミツアキ)
はい。今の勤務している病院は、約200床主に回復期リハビリテーションなどを行うような病院です。現在は看護師歴としては11年目、診療看護師(NP)としての経験は5年目になります。最初に診療看護師(NP)を目指したきっかけっていうところなんですけども、元々私は、看護専門学校を卒業し、今所属している施設で活動を始めて、3年目の時にこれからのキャリアをどうしていこうか考えていた時期がありました。その時に違う組織に異動した方かいいのかなとか考えていた時期があったんですけど、その時にまず異動するにしても最終学歴が専門学校卒だったので、学士の資格が必要なんじゃないかと思い、通信の大学に通いながら看護に関連する様々な資格を取得したりしていました。
その過程でとある人(先輩看護師)との“出会い”があり、その方から「うちに診療看護師(NP)がいるから、一度会ってみないか」とお誘い頂き、診療看護師(NP)の方と出会うことができました。実際に活動されている診療看護師(NP)の方から実践の様子などお話を聞いた時に、“看護師としてのプライド”や”覚悟”、そして”患者さんたちに向き合う姿勢”っていうのが、僕が求めている看護の理想だったので、僕も診療看護師(NP)になって、患者さんたちに責任をもって関わっていきたい!と思うようになり、診療看護師(NP)を目指すことになりました。
その後の学習過程を経て、無事に診療看護師(NP)になって1年目を迎えることができました。1年目の頃は、主に実践力の向上を図ることを目的に所属施設内で臨床研修を行いました。2年目以降は、これから診療看護師(NP)として、どのように活動していこうか考えるようになり、組織や医療チームのメンバーと共に組織分析をして課題を抽出しながら動の目的を探求しました。その過程で、主に移行期ケアに取り組んでみたいと思うようになり、移行期ケアの一環として入退院支援を行うためにまずはその“システム作り”から取りかかることにしました。入退院支援システム作りと実践を経験しつつ、3年目は看護部内の教育師長という役割を頂いたので、教育師長としての役割も意識しながら、看護部という組織の質を向上させるために、看護部教育を積極的に取り組みました。
そうですね。まず退院支援の部分においてでは、やはり患者さんたちを地域に繋ぐというケアを展開していく上で、やはり本質的に看護ケアの課題もあるんではないのかなというふうに思い、うまくいかない事例などを医療チームで分析し看護ケアの課題をみんなで考えるようになりました。なので、私の個人の力量でどうかするというよりかは、システムとして、医療チームとしてどういうふうにその課題を解決できるのかっていうことを意識しながら取り組んでいたと思います。
看護部教育に関しては、今までは自分自身の成長に主眼を置き取り組んでいましたが。改めて、看護の質っていうとこを考えた時にそもそも『看護の質とは何か?』を自分に問いかけました。さらにその質を向上させるために、今どういうところが良いところがあって、どのようなところが課題なのかなどを考え、そしてそれをより一つでも多く向上させていくために、どのような取り組みを行っていくのかっていうことを考えるようになりました。看護師長というキャリアを頂いたことは、とても良いきっかけになったと振り返っています。
管理者の方々に関しては、私が診療看護師(NP)として活動を始めた当初は、診療看護師(NP)に関して、まだ十分に認知されていない時でしたので、まずはそれをお伝えしていくところから始めました。まず『どういうことができる職種なのか』、そして、『どういうことに取り組んでいきたいのか』っていうことをお伝えして、その中でたくさんのお話させていただく機会があり、その中で『私の看護師としての価値観』を管理者の方々と共有させて頂きました。その中で、管理者の方々からも、私の主張に対してどういうことが支援でき、どういうことが応援できないというようなことを色々とお話させて頂くことができました。このような経験を通じて、双方の価値観の共有ができ、管理者の方々にも少しずつ私のことや診療看護師(NP)のことを理解して頂けたのかなというふうに振り返っています。管理者の方々とコミュニケーションを積極的に取らせていただくことで、やはりいろんな取り組みのときに応援していただくことが増え、よりみんなで進めたいことを管理者の方々と一緒に取り組むことができたのではないかと思いますし、診療看護師(NP)として、その組織で定着させていくためには、間違いなく管理者の方々、先輩の方々の協力が必要だと思います。
はい、なるべく会議室など堅苦しい場所ではないところで、コミュニケーションをとることから始めることは、重要かなと思いました。ついつい、診療看護師(NP)として、新しいことをやっていかなければならないとか考えすぎたり、その組織に初めて仲間に入る診療看護師(NP)だったりした場合は、特に自分のことを知ってもらわなければいけないとか、何かを伝えていかなければいけないっていう思いがどうしても先行しがちにはなるんですけど、やはりそこに関しても、相手のことを知って、そしてその上で私たち診療看護師(NP)のことをお伝えしていくという、プロセスはとても重要なのかなと思います。
スタッフの声に関しても、当初は何をする人なのかというのが、よくわからないっていうのが、現状だったと思います。しかし、先ほどの話しにあったように管理者の方々の協力のお陰で、スタッフの方々にも徐々に診療看護師(NP)の活動が浸透していったように思います。実際に働いていくとやはり診療看護師(NP)がいると助かるという声や、診療看護師(NP)にこういうことを聞いてみたいっていうふうにお声掛けいただく機会も徐々に増え、実際の数値では示すことができないのですが、院内のPHSの着信数も1年目の時と比較すると2年目、3年目と経験を積めば積むほど、たくさんのお電話を頂けるようになってきたと感じます。そのことに関しては、もしかすると自分も医療チームの一員として少しでも役に立てているのかなというふうに思えたりもします。
そうですね、同じ看護師であっても年代や経験によって、診療看護師(NP)である私に対して、違う角度からの質問や相談を頂くことというのはよくあります。その中で心掛けていることは、なるべく私の答えだけではなく、まずは相談して頂いた方の考えや思いを確認して相談に応じるようにしています。
同じ看護師であっても年代や経験によって、診療看護師(NP)である私に対して、違う角度からの質問や相談を頂くことというのはよくあります。その中で心掛けていることは、なるべく私の答えだけではなく、まずは相談して頂いた方の考えや思いを確認して相談に応じるようにしています。
相談頂く相手をリスペクトした上で、コミュニケーションを取られているのですね。それは診療看護師(NP)にとって必要なコミュニケーションのテクニックですね。よく理解できました。
まず1つ目は、「組織への貢献」です。
組織の貢献に関しては、まずはその組織を自分なりで良いので、しっかりと分析することが重要と考えています。それは組織の強みだったり、弱みだったりを捉えて、その組織には必ず目標や目的があるので、自分自身が診療看護師(NP)として、その組織にどのように貢献できるのか、そのために今、どういう取り組みが必要なのかを考え、行動することがポイントだと思います。
2つ目は、「医療チームのメンバーとのコミュニケーションを意識する」です。
これは管理者やスタッフに言えることですが、コミュニケーションをとりながら、相手に対して思いやりを持って関わっていくっていうことが、組織において、役割を定着させていくためのポイントの一つだと思います。
先ほども言ったように、どうしても診療看護師(NP)は、自分のやりたいことを伝えてたり、自分の思いということが先行しがちな時期があると思いますが、その中でも相手の思いを確認しながら、そして相手がどういうことに困っていることなのかなどを確認して、それを解決するために、診療看護師(NP)としてどのように関わっていくことができるのかなどを考えていくと、定着への糸口になるんじゃないのかと思います。また、少しでも医療チームメンバーとコミュニケーションをする時間を作っていくということは、組織定着のためにはとても重要なことかなと思います。
そして、3つ目ですが組織定着というと、どうしても周りのことに意識は行きがちにはなるのですが、とても大事なこととしては、「自分自身がどういうことをやっていきたいのか、そして自分自身がそこに対して楽しいのか、わくわくするのか」っていうポイントはとても重要だと思います。
そのためには、「結果(臨床での貢献)を評価し示していかなければならない」と思っています。役割を理解してもらうためには、やはり臨床での貢献の成果(結果)を示していくっていうところが求められていきますので、その結果っていうこと意識し、組織からの信頼に繋げていく、そしてさらい成長していくと、おそらく自分が楽しく、仕事に取り組めるのではないかなと思います。自分自身がそういう価値基準をしっかり持ち、取り組んでいくと、組織定着に向け、良い方向に向かうのではないかと思います。
ありがとうございます。原さんの今までのキャリアとかですね、そういった話の中から出てきたエッセンスが、最後の三つのポイントに非常に絡み合い、読者にとってもとても参考になると感じました。ちょっと感動しました。
そうですね。今までは、目の前の患者さんに、どのようにより良いケアを届けていくのかっていうところを主眼に置いて、診療看護師(NP)にチャレンジして徐々に目の前の患者さんから医療チーム、組織、地域への貢献と徐々に対象の領域が広がってきたように思います。その中でこれから取り組んでみたいこととしては、地域の住んでいる住民の方や利用者さん患者さん、その家族にも、この診療看護師(NP)として経験させて頂いたことを今度は、自分自身が届けていきたいなと考えています。
ありがとうございます。診療看護師(NP)としての良き経験が、少しずつ診療看護師(NP)としての自信となり、さらにその役割が広がり、活動するフィールドも変わっていくのですね。今後のご活躍も楽しみにしています。
聞き手 : 日本NP学会 広報委員長
本田和也