TOP日本NP学会誌日本NP学会誌 Vol.7 No.1(2023年5月)

日本NP学会誌ISSN 2432-0218

日本NP学会誌 Vol.7 No.1(2023年5月)

論文タイトル

英国プライマリケア領域Nurse Practitioner の職能拡大推進の要因に関する文献検討. A Literature Review of Factors Driving the Expansion of the Primary Care Nurse Practitioner Profession. 福田和行・桑野紀子・小野美喜

内容

【目的】
本研究では,英国プライマリケアNurse practitionerの活動について文献を調査した,発展の推進力となった実践および成果を明らかにし,日本の診療看護師(NP)発展への示唆を得ることを目的とした.
【研究方法】
医中誌,CiNii,最新看護牽引Web, PubMed, CINAHL with Full Textを用い,英語および日本語で,「Nurse Practitioner」「Primary care」「UK」のキーワードで過去10 年間の文献を調査した.
【結果】
68件の文献を抽出した.文献タイトル及び抄録を精読し,Nurse practitionerの実践と成果について記載されている入手可能な7文献を分析対象とした,実践では,時間外サービス,コンサルテーション等,14項目が抽出された.成果では,有効な処方パターン,利便性の改善等,9項目が抽出された.
【考察】
英国は,2000年以降,General Practitionerへのアクセスの利便性低下,医師の長時間労働といった社会的背景から,政府がNurse practitionerの職能拡大を推奨してきたことが読み取れた.診療看護師(NP)も社会のニーズに応えて協働する医師と競合しない,独自の役割を獲得していくことでその社会的認知を拡大していくことが重要である.
Key Words: Nurse practitioner,プライマリ・ケア,イギリス,実践,アウトカム

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論文タイトル

テント上未破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術 の術後嘔気・嘔吐と診療看護師(NP)の役割. Postoperative nausea and vomiting after clipping of unruptured supratentorial cerebral aneurysms: Role of the nurse practitioner. 橋本優・小松文成・大久保麻衣・片山朋佳・佐々木建人・ 宮谷京佑・田中里樹・山田康博・加藤庸子

内容

【目的】
術後嘔気・嘔吐(postoperative nausea and vomiting: 以下PONV)は術後の不快感や合併症,麻酔後ケアユニットの滞在時間延長や医療費の増加に関連する.脳神経外科領域でのPONVの発生率は高いが,未破裂動脈瘤の開頭クリッピング術後のPONVについては明らかになっていない.本研究はテント上未破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術後のPONVの発症に関して検討し,診療看護師(NP)の役割について考察することを目的とした.
【対象と方法】
2021年5月1日から2021年9月9日に当院に入院したテント上未破裂脳動脈瘤に対し待機的に開頭クリッピング術を施行された患者を対象とした.後ろ向きに調査して術後48時間以内のPONVの発症と要因について検討した.
【結果】
対象となった39例のうちPONVを発症した症例は20例(51.3%)であった.PONVを発症した症例は発症しなかった症例と比較して手術時間(OR=1.02, 95%CI:1.00-1.04, p=0.025)および麻酔時間(OR=0.97, 95%CI:0.93-1.00, p=0.035)が有意に長く,年齢,性別,Body Mass Index,喫煙歴,Apfel score, American Society of AnesthesiologistsによるPhysical Status,揮発性麻酔薬の使用時間,オピオイド使用量,PONVの予防薬,手術部位,術後1週間以内の合併症に有意差は認めなかった.
【結論】
テント上未破裂動脈瘤に対する開頭クリッピング術後においてPONVの発生率は高く,より予防が重要である.PONVの予測において従来の要因よりも手術時間および麻酔時間が関連している可能性ある.診療看護師(NP)はPONVの発症の要因を理解して有害事象を抑制し,術後の嘔気や嘔吐の早期の診断・治療に寄与できる可能性がある.
Key Words:診療看護師(NP),術後嘔気・嘔吐,PONV,クリッピング手術

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論文タイトル

日本における診療看護師(NP)の 自律した活動獲得のプロセス. Processes of acquiring autonomous practice among nurse practitioners in Japan. 三重野雅裕

内容

【目的】
本邦の診療看護師(NP)の活動は,所属する組織の方針や個々の診療看護師 (NP)に委ねられている現状がある。本研究の目的は,本邦の診療看護師 (NP)が所属する組織の中で,協働する医師の理解を得て自律した活動を獲得するまでのプロセスを明らかにする事である。
【方法】
臨床経験5年以上の診療看護師 (NP)に面接を行った。分析方法は,修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチを採用した。
【結果】
分析の結果,35個の概念から11のカテゴリーが生成された。診療看護師(NP)の自律した活動の獲得のプロセスは,【診療看護師(NP)を取り巻く環境】の中で,【診療部に所属することのメリットを活用(する)】していた。診療看護師 (NP)は【自己研鑽と記録により医師に知識を開示する】【技術的な成果をベースに役割を確立していく】【需要を読み自主規制する】というプロセスを経過しながら【提案(を行う)】を行なっていた。診療看護師 (NP)は,【協働する医師の傾向を知り提案を変化させる】【医師との協働と達成感を共有する】【依頼の変化と成長の実感】という経験学習の中で【医師との信頼関係の構築と他の医師への広がり】【責任感の増加と診療看護師(NP)として新たな役割の認識】というプロセスによって自律した活動を獲得していた。
【結論】
本邦の診療看護師 (NP)は,技術的な役割を基盤に医師との信頼関係を構築することで,自律した活動を獲得している事が明らかとなった。
Key Words:自律性,診療看護師(NP),医師,信頼関係

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論文タイトル

診療看護師(NP)が一次・二次救急患者に 対応するための包括的指示書の作成. Preparation of comprehensive instructions for nurse practitioner (NPs) to deal with primary and secondary emergency patients. 森寛泰・山口壽美枝・竹本雪子・福田貴史・松本 謙太郎・ 和田晃・大西光雄・平尾素宏・中島伸

内容

米国Nurse Practitionerをモデルとして養成された診療看護師(NP)を導入した救急外来では救急待ち時間の短縮や再入院率の低下などのアウトカムが報告されている.当院においても医師の監督下で診療看護師(NP)によるAdvanced triage を取り入れた救急外来の開設により,医療の質を担保しながら診療生産性の向上や医師の診療業務負担の軽減が実現しつつある.救急外来において法制化されていない診療看護師(NP)が一次・二次救急患者に対応していくためには,診療看護師(NP)の活動を明文化し,医療スタッフ間の診療看護師
(NP)への認識を明確にしていくことが必要である.そこで,現行法令下で診療看護師(NP)の医学的判断能力を全面的に活用して「診療の補助」を効果的に実践できる救急外来用の包括的指示書を作成した.包括的指示書は,当院での診療看護師(NP)の2014年以降の活動実績をもとに,医師,顧問弁護士,医療訴訟事務担当者の協力を得て作成した.包括的指示書の主な内容は,診療看護師(NP)は救急初診患者に対して,医療面接,身体診察を行い,その患者に必要とされる検査適用を自律的に判断し,疾病および入院・帰宅に係るアセスメント・マネジメントを実践するものである.2021年11月からこの包括的指示書を活用しており,院内における診療看護師(NP)の業務の明文化を図ることができ,診療看護師(NP)に対する医療者間の理解も深まり,COVID -19へ対応もスムーズに行われるなどの効果が出ている.作成した包括的指示書が他の施設でも利用され,救急患者に対する診療看護師(NP)の業務役割の標準化につながることを期待している.
Key Words:診療看護師(NP),Nurse Practitioner,救急診療

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